「ヘレンダグラスハウス訪問記 」

もみじの家利用者のお母さま、佐藤奈津さんが英国の「ヘレンダグラスハウス」の訪問記を寄稿してくれました。

長男が修学旅行で1週間家を空けることをチャンスと思い、英国へのひとり旅を思いつきました。
次男、幹汰が時々利用しているもみじの家が、英国のヘレンダグラスハウスをモデルに建てられていること。世界で最初のこどもホスピスの原点はどんなところだろうと知りたくなり訪問を決めました。
全く英語も話せないひとり旅です。

ヒースロー空港から電車を乗り継ぎ、2時間弱ほどでオックスフォードに到着しました。オックスフォードは、学生の街と言われるほどオックスフォード大学をはじめ、大学や教会など世界遺産となっている建築物もありとても美しい街並みでした。昼間は女性一人で歩いても危険を感じることなく治安も悪くない印象でした。市内の移動は、2階建ての路線バスが主な交通機関です。最初の4日間はこの街を起点にあちこち迷いながらもひとりで散策しました。

バス停に名前がなく路線の記号のみが目印だったため、複雑な路線地図を凝視しながら、グーグルアプリでバスの現在地を確認しながらオックスフォードの市街地から約 20分ほど走ったバス停を降りると、賑やかな都会から一気に閑静な住宅地が広がりその1画にヘレンダグラスハウスがありました。

受付で声をかけると、満面の笑みでボランティアスタッフの方が出迎えて下さりました。英語も話せない私に、「心配しないで大丈夫。ようこそ」と言ったようなこと声をかけてくださいました。そして、英国滞在5日目にして日本語が話せる方と出会いました。もう、この時の安心感は忘れられません。この方が日本人の通訳ボランティアの方です。
この日は数人の子供たちが元気よく遊んでいました。この子達は数日のショートステイの子供達です。
ちょうど音楽セラピーの最中だったようで、スタッフがギターを弾きながら楽しそうに歌い体を揺らしていました。天井が高くカラフルでその空間にいるだけでわくわくするようなプレイルームで、スタッフの大人たちも子供たちと同じくらい楽しそうに演奏していたのが印象的です。


洋服もテーブルも汚して大丈夫。思いっきり絵の具だらけになれる制作スペース。
そして、たくさんのおもちゃに囲まれた可愛いお部屋でした。

外に出るとたくさんのハーブやお花が植えられた綺麗なお庭が広がっています。私が訪問した10月は花が少ない時期のようですが、とても英国らしい素敵なガーデンでした。ストレッチャーごと出入りできる大きな窓。屋根があるスペースもあり日差しや雨を避けることもできました。
お庭の一画に、小さな小屋のようなものがありました。ここは、病気の子供の兄弟姉妹達の専用のお部屋のようです。エレファントクラブという名前で様々なプログラムが用意されており、病気の兄弟のことを少しだけ忘れて兄弟達が主役になれるお部屋なのだそうです。


家族に病気の子供がいると、その兄弟は様々な場所に預けられたり、我慢を強いられることもあると思います。同じ立場の兄弟児同士の交流もできる素敵な取り組みだと感じました。

食堂には、テーブルにはとっても可愛い猫のランチョンマットが敷いてありました。口から食べる子、経管栄養の子、点滴の子みんながここに集まりお食事をいただきます。口から食べないのに、ランチョンマット!これには経管栄養のみで栄養をとっている子供の親としては、とても嬉しい気遣いだと感じました。

また、今回滞在した時に、ちょうど2日前に亡くなった赤ちゃんとそのご家族が滞在していました。
NICU からの要請を受けて NICU からこのヘレンダグラスハウスに来て最期の時を家族で過ごしたそうです。赤ちゃんを抱きながら、お庭をゆっくりと歩くご両親の姿が印象的でした。
ここでは赤ちゃんが亡くなった後にも、医師や看護師以外にも様々なスペシャリストのグリーフケアが受けられるそうです。赤ちゃんがこの家族のもとに生まれてきた意味、亡くなった意味。様々なことをじっくりと考えたり感じたりすることができるそうです。

お庭にはゆっくりと想いにふけることができるモニュメントとベンチが置いてあったり、いろいろ配慮されていました。この赤ちゃんは、もし病院から退院することなく亡くなっていたらハーブの匂いを嗅いだり風を感じたり、小鳥のさえずりを聞いたり・・両親に沢山沢山抱っこしてもらったりといった経験ができなかったかもしれません。日本でも在宅で小児の看取りをしているケースもあります。住み慣れたおうちで過ごせるメリットもありますが、常に医師や看護師がいるわけではないので家族の負担や不安は大きいと思います。
ヘレンダグラスハウスのような施設で最期を過ごすということは、在宅とは違ういつも医療者がいる安心感が大きいと感じました。

今回の訪問で、ハウスの施設や体制のすばらしさはもちろん、働いているスタッフ一人一人がとても生き生きとしていることが印象的でした。職員食堂で昼食時にいただいたお水には、ミントの葉っぱが浮かんでいました。とっても爽やかな香りです。

こういった配慮は、頼んでいるわけではなく、調理の方が今日は暑いからこれをお水に入れよう♪などと日替わりでスタッフを楽しませてくれるそうです。
ここで働く方の多くはボランティアスタッフです。自然と「どうしたら人を喜ばせることができるか?」「小さな Happyを届けたい」とそれぞれがそれぞれの立場から自発的に動くそうです。何がそうさせているのでしょうか?聞いてみたのですが、「自然とそうなるんです」との返答でした。これが、このハウスの答えなのかもしれませんね。

佐藤 奈津
*注 ヘレンダグラスハウスへの訪問は事前承認が必要です。