【ご報告】講習会「きょうだい児支援 ~きょうだい児の経験や思いと本音~」を開催いたしました

2018年9月17日(祝)国立成育医療研究センター講堂にて、首都大学東京教授、山本美智代先生による講習会が行われ、20代の学生から50代までの方が参加され、最後には参加者からのご意見やご感想とご質問をいただき、盛況な講習会となりました。

山本先生は、1997年から2008年まで主に先天的な障がいのある兄弟姉妹と一緒に成長してきた成人「きょうだい」32名を対象に、兄弟姉妹が障がいや病気であることで、「きょうだい」ご自身がどのような体験をしてきたのか、過去を思い出してもらう方法で聞き取り調査を行っており、その結果をご講演いただきました。

聞き取り調査の結果

兄弟姉妹が後天性の病気の場合は、自分の置かれた状況が特別と自覚することから、その驚きを自由に表現できる場所があると気持ちを整理しやすくなるという意見が多かったとのこと。
先天性の障がいがある場合は、自覚する時期によっても異なるが、社会からの厳しい目と遭遇し、衝撃を受けるので、もっと早くに障がいの原因や立場を教えてほしかったという意見が多かったとのこと。

共通して、「きょうだい」は未成年のため、病室内に入ることができなかったことで居場所を失ったと感じていることから、ひとめ兄弟姉妹に会ったり映像で見ることができれば、両親と兄弟姉妹のことについて話すこともできるとの意見もあり、両親は、「きょうだい」と思いきり遊ぶ時間を持つことが大切で、「きょうだい」は病院の様子を知りたいのに聞けないような状況になっている場合もあるので、「きょうだい」も仲間に入れて出来ることを説明し、居場所をつくってあげることが良いという説明がありました。

「きょうだい」の成長プロセスのタイプ

調査の結果、下記の3タイプに分類された。

タイプA(16人/29人)
小学校時代は、家事のお手伝いをしたり、兄弟姉妹の安全を見守るなどの役割があり、周囲から兄弟姉妹の分まで頑張ってほしいと期待が向けられる(親のシナリオ)。
小学校高学年から中学校ぐらいは、障がいのある兄弟姉妹の家族であることから、周囲からからかいの対象となり、家族を隠す反面うしろめたさを感じる(社会のシナリオ)。
高校生になると、遠い高校に通ったりして、自分や家族を知る同級生との接点を遠ざける(自分のシナリオづくりに取り組む)。
20歳前後に自分にとってプラスになる場合に限って、兄弟姉妹の障がいを人に話すようになり、兄弟姉妹に障がいがあることを自分の強みにする(自分のシナリオを演じる)。
このようなプロセスを経ると考えられるタイプ。

タイプB(9人/29人)
社会のシナリオに同調せず、障がいのある兄弟姉妹を恥ずかしいことではないと考えられるタイプ。

タイプC(4人/29人)
自分のシナリオづくりに取り組まず、障がいの意味づけに関心がなく、社会に興味を示さずに、母親との関係や関心を中心にしているもあると考えられるタイプ。

最後に、障がいの兄弟姉妹をもったことを得がたい体験として、精神的に成長することや、命の尊さを知ること、家族のきずなを感じたりする人が多いとも報告されました。

講演終了後には、多くの方から親として「きょうだい」を心配する声やご質問、ご意見を頂戴しました。

Q: きょうだいを支援する団体がありますか?
A: 数年前までは活発だったのですが、最近は少なくなってきているのが現状です。
(NPO法人しぶねたの活動が紹介されました)

Q: 「きょうだい」の成長プロセスのタイプBに育ってくれればいいのですが、アドバイスがあれば欲しいです。
A: 持って産まれた性格も大いに影響していると考えられますが、自分自身の強みとしている子どもはいます。
Q: 原因は何?と聞かれたら、どう答えればよいのでしょう?
A: 周囲から聞かれたら、こういう風に答えればよいのではという例を示してあげたらよいのではないでしょうか。
親から説明するのはハードルが高いですが、周囲から言われるとショックが大きいのも確かです。

Q: 兄弟姉妹が大きくなって、将来どうするのか心配です。
A: 「きょうだい」は将来どうなるのか、結婚して家を出ても良いのか等、心配な人がいるのは確かです。それを相談できた人もいますし、できない人もいます。
将来の目標や親の考えを説明し、「きょうだい」としてこういう支援をしてほしいと説明すると、「きょうだい」はそれならできると安心する場合があると思います。

Q: 支援のためにたくさんの人が出入りしており、その人たちにどのように接してもらえば良いですか?
A: 訪問看護師が来ている時は、親は「きょうだい」と遊ぶ時間と考え、思い切り遊んであげてもよいのではないでしょうか。
支援者には、「○○ちゃんのきょうだい」ではなく、きちんと名前で呼んでもらうと「きょうだい」は承認されていると感じるかもしれないです。

参加者の背景は、障がいのある兄弟姉妹をもつ子どもがどのような葛藤を抱えて成長していくのか心配されて参加された方や、第二子の出産を考えていらっしゃる方、障がいのある子どもとその「きょうだい」について悩んで参加された方、医療従事者となるための勉強中の学生さんなどでした。
『周囲の環境や「きょうだい」に対してどのように配慮すべきかがよく解かり、勉強になった』等の感謝の言葉を頂戴いたしました。

【協賛】株式会社ロッテ様にご協賛いただき、お土産にお菓子を配布させていただきました。